親族により複数の会社を経営されている場合、欠損金等を多く抱えている会社を適格合併等により他の黒字会社に引き継ぎたいとお考えの方も多いと思います。

親族の数名により合併会社と被合併会社の株式を100%保有している場合を例にすると、適格合併は可能(適格合併の要件は下記【Ⅰ】参照のこと)ですが、株式を交付する場合親族間のみなし贈与課税の可能性が生じます。

そこで株式を交付しない、無対価適格合併が可能であるかが問題となります。(無対価の要件については下記【Ⅱ】参照のこと)

それでは、親族の数名により合併会社と被合併会社の株式100%を保有している場合、無対価の要件を満たすでしょうか?

 

答えは…  満たしません。

 

ポイントは、適格合併の要件と無対価の要件での、完全支配関係における『一の者』の解釈の違いです。

 

適格合併の要件における完全支配関係(【Ⅰ】※参照)では、『一の者』に親族等が含まれます。これに対し、無対価の要件(【Ⅱ】参照)における完全支配関係の『一の者』には、【Ⅰ】※のような括弧書きはなく、親族等を含まないものと解されます。

このように親族の数名によって合併会社と被合併会社の株式100%を保有している場合には、無対価適格合併の要件は満たしませんので、同族会社間の事業再編をお考えの方は株主の構成には十分にご注意ください。

【Ⅰ】 適格合併の要件

100%グループ内の適格合併の要件として以下のものが挙げられます。

① 被合併法人の株主に合併法人の株式以外の株式以外の資産が交付されないこと

② 以下のいずれかの要件を満たすこと

イ) 被合併会社が合併会社の100%子会社であること

ロ) 同一の者を完全支配者(同一の者による完全支配関係については、※参照 のこと)とする会社同士の合併で、その支配関係が継続することが見込まれていること

※ 同一の者による完全支配関係について

上記②ロ)の完全支配関係とは、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係(以下「当事者間の完全支配関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係(以下「法人相互の完全支配関係」といいます。)をいうこととされています。(法2十二の七の六、法令4の2②)

なお、一の者が個人である場合における当該一の者と特殊の関係のある個人とは、次に掲げる者(以下「親族等」といいます。)をいうこととされています。

(法令4①、4の2②)

ⅰ 一の者の親族

ⅱ 一の者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ⅲ 一の者(個人である一の者に限ります。ⅳにおいて同じです。)の使用人

ⅳ ⅰからⅲまでに掲げる者以外の者で一の者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの

ⅴ ⅱからⅳまでに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

 

【Ⅱ】 無対価の要件

無対価の要件としては適格合併の要件に加えて次のものが挙げられます。

合併前の同一の者による完全支配関係が次に掲げるいずれかの関係がある完全支配関係である場合に限り、適格合併に該当することとされています。(法令4の3②二)

ⅰ) 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ⅱ) 一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ⅲ) 合併法人及びその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ⅳ) 被合併法人及びその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

 

 

(担当:O)

 

 

投稿者 esstaff