親子間の土地の賃貸借について

親子間の土地の賃貸借について

親の土地に子が家や店舗を建てるというケースはよくあることかと思います。

その土地の貸借は、賃料の有無により「賃貸借」又は「使用貸借」に分類されます。親族間では賃料を支払わない使用貸借の方が多いかと思いますが、子が賃料を支払う賃貸借の場合には注意が必要です。

土地の賃貸借の場合、一般的には、地代の支払の他、新に契約を結ぶ際に権利金を支払うことがあります。権利金を支払った借地人には借地権が発生します。借地権とは、建物の所有を目的とする地上権、土地の賃借権を意味します。

親子間の土地の賃貸借の場合、権利金を支払うことはあまりないかと思います。権利金を支払わない場合には、借主である子が権利金分の利益を得たことになります。結果、子は親から借地権を贈与されたこととなり贈与税の対象となる場合があるためご注意下さい。

ただし、権利金の支払がない場合であっても、相当の地代を支払っていれば贈与税の課税対象とはなりません。

相当の地代(年額)= 自用地価額(※1)の過去3年間の平均額 × 概ね年6

※1 自用地価額は、一般的には相続税評価額を用います。

権利金又は相当の地代を支払う場合を除いて、原則として借地権相当額が贈与として課税されることとなります。(相当の地代未満の地代のみを支払う賃貸借契約の場合を想定しています。令和2年12月追記)

認定課税される金額は以下のようになります。

認定課税金額

 =自用地価額×借地権割合

   ×{ 1 -(実際の地代の年額-通常の地代の年額※2

     ÷(相当の地代の年額-通常の地代の年額)}

※2 通常の地代の年額は、その地域における通常の賃貸借契約に基づいて支払われている地代により計算しますが、不明な場合には以下の算式により計算します。

通常の地代の年額=自用地価額×(1-借地権割合)×6%

(担当:O)

社会福祉法人制度改革について

社会福祉法人制度改革について

 

平成28年3月に社会福祉法の改正が成立し、平成29年4月に「社会福祉法人制度改革」が施行されました。

社会福祉法人は社会福祉事業を行うことを目的とした公益性の高い非営利法人で、補助金が受けられ、法人税や消費税、固定資産税などが原則非課税といった財政上の優遇措置が受けられます。

今回の改革は、近年の少子高齢化による人口構造の変化や地域社会の変容により福祉ニーズが多様化・複雑化してきたことと、昨今の社会福祉法人の運営に対する指摘(内部留保の問題や一部の不適正な運営等)も背景にあるようです。

改革の主な内容は

①経営組織の在り方の見直し

これまで任意設置とされていた評議員会ですが、理事や理事長に対する牽制機能を持たせるため法人の重要事項を決議する議決機関として必置となりました。

また、一定規模以上の社会福祉法人には、会計監査人の設置が義務付けされました。

 

②運営の透明性の確保

公益性の高い法人として国民に対する説明責任を十分に果たすとの観点から、事業報告書、財産目録、財務諸表に加え定款や事業計画書、役員報酬基準が閲覧対象書類とされました。また、定款、財務諸表、現況報告書等についてホームページを活用して公表することとなりました。

 

③財務規律の強化

社会福祉法人の内部留保の肥大化、不透明化に対する措置として、法人は「純資産額」から「事業の継続に必要な財産額」をひいた額(社会福祉充実残額)を明確化し、社会福祉充実残額が生じる場合には、社会福祉事業又は公益事業の新規実施や拡充の計画を義務付け、所轄庁の承認を受け計画を実施していくこととなりました。

 

 

その他、地域における公益的な取り組みを実施する責務、所轄庁による指導、監督機能の強化など行政の関与の在り方も見直されています。

 

担当:S

「のれん代」とは

「のれん代」とは

 

最近では企業の買収や合併がごく日常的に起こるようになり、「のれん代」という言葉をよく聞くようになりました。「のれん代」とは、企業の資産の中の営業権のことです。

「のれん代」は、企業の合併や買収、営業の譲り受けの時に限って資産に計上されます。「のれん代」に限らず無形固定資産というものは、企業にとってビジネスの上では不可欠のものですが、会計上の取り扱いがむずかしくしばしば議論の対象となっています。

中でも「のれん代」は、その定義からしてあいまいな部分が多く、金銭的に評価することも困難とされています。のれん代の評価をめぐって企業の業績が大きく変わってしまうこともよく起こります。

ここではベンツ車の例を考えてみます。ベンツ製の車が、まったく同じコストと性能を持つA社の自動車よりも市場での価格が高い場合、そのベンツ車には「超過収益力がある」ことになります。世の中の人々は高い金額を払ってでもベンツ車を買おうとしており、そこには高い金額に見合うだけの理由があるはずです。

ベンツ車に超過収益力をもたらしている理由はどこにあるのでしょうか。一概には言えませんが、次のような理由が考えられえます。

(1) ブランド名が広く知れわたり、名前を聞いただけで製品価値がわかること

(2) 経営の組織(従業員や経営者)が優れていること

(3) 製造技術やサービスが優れていること

(4) 製造に関する機密が保たれていること(容易に真似されないこと)

(5) 営業所の立地がよいこと、どこにでもあること

(6) 取引先と特殊な関係を結んでいること

 

この中のいくつかの理由はベンツが創業当時から持っていたものでしょうが、別のいくつかの理由はベンツが営々と時間をかけて築きあげてきたものです。ベンツ車の持つ性能、組織、サービスなどの長所が年月をかけて、他社にない価値を作り上げてきたのです。これこそが超過収益力の源泉であり、ベンツのブランド価値です。

ベンツの持つ企業価値に惚れ込んだ別の自動車メーカー(B社)が、ベンツを丸ごと買収しようと考えたとします。ベンツもこの合併話に乗り気で、両社はそれぞれの株主総会での了承を得て合併合意書に調印しました。あとは両社の合併を会計処理上で済ませるだけです。

「のれん」の会計処理

ここで合併の会計処理を行うに当たって、「持分プーリング法」と「パーチェス法」のふたつの処理が登場します。

「持分プーリング法」とは、合併の会計処理にあたって、合併されるベンツの資産・負債を元の帳簿価額のままB社が受け入れる方法です。これに対して「パーチェス法」は、ベンツの持つ資産・負債を公正な価値(=時価)で評価してB社が受け入れる方法です。

「持分プーリング法」と「パーチェス法」というふたつの会計処理の違いは、

<1>持分プーリング法はベンツの持つ資産・負債を帳簿価格(簿価)で引き継ぎ、パーチェス法では時価で引き継ぐ点で大きく異なります。

そのために「のれん代」についても、

<2>持分プーリング法では「のれん代」が計上されませんが、パーチェス法では「のれん代」が計上されるという違いが生じてきます。

米国の会計基準や国際会計基準では、持分プーリング法を廃止してパーチェス法を用いる傾向が強くなっており、国内基準との差異が認められます。

国内基準では、「のれん代」の償却について、資産として計上された「のれん代」は、一定の期間で費用として償却しなければなりません。商法では5年以内、企業会計原則では20年以内の「一定の期間」と規定されています。

実際に適用される場合は、企業の実態に合わせて判断され、最近は楽天のように1年間で一括償却する会社も増えています。

担当:  R